胸腔鏡下手術により切除した, きわめてまれな食道壁内神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は59歳の男性.胸部CTで縦隔腫瘍を疑われ, 当科へ紹介となった.胸部X線写真では, 縦隔に淡い腫瘤陰影を認めた.胸部CTでは気管分岐部下に, 境界明瞭, 内部均一な腫瘤影がみられた.胸腔鏡下手術によりアプローチしたところ, 食道筋層に覆われた腫瘤が認められた.筋層を鈍的に開排し, 慎重に剥離を進め, 腫瘤を摘出した.術中食道内視鏡およびリークテストを行い, 食道粘膜損傷の無いことを確認した.摘出標本は, 5.0×3.5×2.5cm大の黄白色の腫瘤で, 術中所見および病理組織所見より, 食道壁内に原発したschwannomaと診断した.合併症なく良好に経過し, 15日目に退院した.12か月後の現在, 再発なく健常である.