2011 年 51 巻 7 号 p. 510-513
症例は18歳男性である.発熱と関節痛の1週間後に強直性痙攣と意識障害が出現した.頭部MRI拡散強調画像にて脳梁膨大部に卵円形の高信号病変をみとめたが,入院3日目のMRIでは脳梁膨大部の異常信号は消失した.髄液所見に異常なく,各種ウイルスと細菌検査も陰性であったが,髄液中のグルタミン酸受容体に対するIgG-GluRε2抗体が陽性であった.アシクロビルとステロイド,抗てんかん薬の投与で意識状態は改善し,強直性痙攣の頻度も軽減して3カ月後に完全回復した.本例では病原体は不明だが可逆性脳梁膨大部病変を有する脳症(MERS)と考えられ,IgG-GluRε2抗体が本例の病態に関与した可能性も推測された.