2015 年 118 巻 6 号 p. 770-775
血管内リンパ腫は腫瘍細胞が血管内腔で増殖し腫瘍塞栓による多臓器不全を来す予後不良な疾患で, 腫瘤形成を伴わないため早期診断は困難である. 症例は77歳女性で主訴は頭痛, CT で篩骨洞陰影を認め急性副鼻腔炎として抗生剤点滴するも軽快せず, 高熱や急速な全身状態悪化を認めた. 内視鏡下篩骨洞開放術を行ったが, 鼻内に腫瘍性病変は認めず, 鼻腔粘膜生検により血管内リンパ腫と診断された. いったんは化学療法に反応したが, 初診より1年9カ月後に死亡した. 原因不明の発熱や進行性の全身状態悪化を認めた場合, 血管内リンパ腫を疑う必要がある. 鼻腔粘膜は血管に富み手術侵襲も少ないため, 本疾患の生検部位として有用であることが示唆された.