日本臨床免疫学会会誌
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総説
抗ADAMTS13自己抗体と血栓性血小板減少性紫斑病
松本 雅則
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2013 年 36 巻 2 号 p. 95-103

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抄録

  血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,血小板減少と溶血性貧血を特徴とし,全身に血小板血栓が形成されることで発症する.無治療では90%以上の症例が早期に死亡する致死的疾患であるが,von Willebrand因子(VWF)切断酵素ADAMTS13活性が著減することで発症することが報告された.ADAMTS13が欠損すると,血管内皮細胞から分泌された超高分子量VWFマルチマー(UL-VWFM)が切断されずに切れ残り,高ずり応力下で微小血管に血小板血栓が形成される.後天性TTPはADAMTS13自己抗体により,先天性TTPはADAMTS13遺伝子異常によって,同活性が低下する.抗ADAMTS13自己抗体には,活性中和抗体と血液中から酵素の除去を促進する可能性のある非中和抗体がある.大部分のADAMTS13自己抗体はIgGで,認識部位はスペーサードメインであるが,この部位はADAMTS13がVWFと結合する際に重要である.後天性TTPにおいて血漿交換は,ADAMTS13自己抗体やUL-VWFMの除去,ADAMTS13の補充などの機序によって有効である.ステロイド治療がADAMTS13抗体産生抑制のために通常使用されるが,最近の研究では,リツキシマブが後天性TTPの急性期治療に有効であることが報告された.

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© 2013 日本臨床免疫学会
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